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しまった。
飲みやすいカクテルだけど、アルコール強めだった。
「あれ、寝ちゃった? 奥で休んでく?」
マスターが気を利かせて声をかけてくれた。
「大丈夫だと思う。タクシーで連れて帰るわ」
なんとかタクシーに乗せて、終電を逃した時によく利用するビジネスホテルへ向かった。
「ここ、どこ?」
部屋のベッドに寝かせて、しばらくしたら目が覚めてきたようだった。
私は時差ボケで目が冴えていたので、椅子に座って本を読んでいた。
「ホテルだよ」
本から目を離さずに答えた。
「お持ち帰り、してくれたの?」
「家の場所、知らなかったからね。どうする? 帰る?」
いつのまにか近寄ってきていて、背後から抱きつかれた。
「一緒にいてくれないの?」
耳元で囁かれてドキリとした。
「起きたのなら、私が帰ろうかな」
一緒にいたら理性が保てないだろうーー今さらかもしれないがーー
「抱いてくれないの?」
「酔っ払いを抱く趣味はない」
抱いてしまったら、セフレになってしまいそうで。それは、なんか嫌。だったら突き放した方がいい。
「酔ってない」
「酔っ払いはみんなそう言うんだよ」
背中から離れた、と思ったら正面に回って膝の上に跨った。
「ちょっと……なっ」
何してるの、と言う前に。
まただ。この上手すぎるキスに翻弄される。
「ちょ、雫、やめて」
やめてくれないと、止められなくなる。
「嬉しい、名前、憶えててくれた」
キスはやめてくれたけど、今度は正面から抱き着いて首筋を舐めてくる。
だから、そんなことされたら。
私の弱すぎる意志なんて、あっけなく砕け散るんだから。
「雫!」
「はい」
「ベッド行こ」
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