300人が本棚に入れています
本棚に追加
ワンナイト
どうして、こうなったのか。
可愛い寝顔を見ながら思う。
偶然? たまたま? あぁ、昔の歌にそんなのがあったっけ。
たまたま居酒屋で隣の席に座っただけよね。
意気投合してお酒を酌み交わした相手は、同性の女の子。
見るからに若いわぁ、お肌のきめの細かさが物語っている。
そんな彼女が目を潤ませて言った。
「お姉さん、私とワンナイトしませんか?」
ん? 今なんと?
意味、わかってるんだろうか。
こんな可愛らしい子が、私みたいなおばさんと?
いやいや、ないわね。
何か勘違いしてるにちがいない。
もしくは、何かの罠?
私は余裕を見せるために微笑みながら。
「意味、わかってるの?」と問うた。
「わかってるに決まってるじゃないですかぁ。ワンナイトラブですよ、直訳して一夜の愛。中学で習う単語ですよ」とケラケラ笑う。
酔ってるね!
「もしかして学生さん?」
「違いますよぉ、あ、もしかしてそれ心配してる? 大丈夫です、成人してるので犯罪にはなりませんよ」クスクス笑う。
犯罪って、、ワンナイトの意味わかって言ってるのか。
本気?
だったらどうする?
守備範囲ではある。いや、ぶっちゃけドストライクなんだけど。
いやいやいやいや、年の差いくつよ?
脳内会議では分裂している。
そんな私を見て彼女は勘違いして。
「えぇ、信じてないんですかぁ? なんなら免許証で確認します?」と財布を取りだした。
「ワンナイトで名前を名乗るなんて無粋よ」と制した私。
あれ、なんでワンナイトする前提で話してるんだろ。
「では、出ましょう」
グイっと引っ張られ、会計を済ませあれよあれよと外に出た。
腕を組まれて寄り添って歩く。
腕に感じる、彼女の柔らかい胸。
年甲斐もなくドキドキしてしまう。
彼女は組んでいた手をするすると下へ移動させ手を繋ぐ。
自然すぎる動作だ。
「お姉さん、手冷たいよ? 温めてあげます」
そのまま彼女のコートのポケットへ。
慣れてる?
このままだと主導権を握られる。
え、何の?
自嘲気味に笑ったら、小首を傾げて「どうしたの?」と言う。
もういいや、これが何かの陰謀だろうとも、据え膳食わねばなんとやらだ。
「結構飲んだよね? 休憩していこうか」
そう誘ったら、少しだけ驚いたようだったけれど。
「はい」と、恥じらいながらも頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!