You are my angel

3/5
前へ
/69ページ
次へ
次の日はまず、指輪を見に行くことにしていた。 前に名古屋で一度、どんな感じなのかお店に行っていたから、事前にネットでどんなのにするのか相談してあって、ショップも予約してあった。 ショップに行くとすでに、お目当てのものが用意されていて、実際にはめてみることもできた。 一応、他の物も見てみたけど、もうそれに決めることにする。 シンプルなプラチナのリングの、一部分だけに波のような形が刻まれている。 実はふたつの指輪を重ねると、それがハートの形になるのだ。 「重ねてみないと分からないってところが、何か可愛いね」 式の日とお互いのイニシャルを入れてもらうことにする。 その手続きをしながら、あぁ…私も結婚するんだなぁ、と思う。 「杏里、こっち見て…?」 ブライダルコーナーのもう一方から慧が呼ぶ。 そちらは、ダイヤモンドをちりばめたエンゲージリングがいっぱい並んでいた。 「僕はこういうのを杏里に贈りたい。良いのを選んで?」 …え~っ。…値段も気になるし、今ここで見て、これが良い…なんて言えないよ。 杏里は心の中でつぶやき、でも、そこまで考えてくれていた慧の気持ちを思う。 「うん、そっちはまた相談させて…?」 慧は、そうなの…?という顔をしたけど、それ以上は言わなかった。 ショップを出ると杏里は、「ありがとね」と言った。 「多分だけど、エンゲージリングってはめる機会は少ないと思うんだ。 だから私はいらないかな。せっかくの気持ちを無下にしてごめんね」 「そうなの? それでいいの?」 「うん、指輪よりもっと高いものをねだるかもよ?」 そういって茶化すと、慧は微笑んだ。 「一個の高価な物より、日々の小さな幸せがいい。  一緒にご飯作ったり、買い物行ったり。綺麗な景色を見に行ったり、家でのんびりくつろいだり。  そんな、当たり前だけどいろんなことを一緒にしたい」 そんなふうに慧に言うと、彼は杏里の手を取って立ち止まる。 ん…?と慧を見ると、彼は杏里の顔を見て「ありがとう」と言った。 「…そんな杏里と結婚できる僕は幸せ者だ」 でしょ? とおどけた顔をして「お互いさまにしよ?」と返す。 「じゃあ、毎年結婚記念日には何かを贈るよ。50年ローンで足りるかな?」 「ふふっ、金額じゃないよ。  お互いに、結婚記念日を覚えていること、感謝の気持ちをちゃんと伝えること。それでいいんじゃない?」 そうだね、と慧は頷いて「周りに人がいなかったらキスしてたよ、今」と笑った。 今は、こういう時しか一緒にいられない。 だから、こうやって隣にいて話ができて、並んで歩けるだけで嬉しくて、ずっとこうしていたいと思ってしまう。 …もうすぐ、それが叶う。…ううん、自分たちで叶えていくんだ、と考えよう。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

282人が本棚に入れています
本棚に追加