父の幻影

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 その日は良く晴れていた。 「まだ、雨は降らないのか」  照りつける太陽の強さに、トワはため息をつかずにはいられなかった。  地面は埃っぽく、白茶けた固い色に変わり果て、草花はぐたりと萎れていた。 「この分だと、作物は育たんな」 「そのせいで獣たちが、食べ物を探して山から下りてくるようになった。近いうちに狩りを始めるから道具が欲しいと言われているんだ。でも、黒曜石がもうない。だから」 「だめだぞ」  トワはリヒトの言葉を遮った。 「竜の谷に近づいてはならん」 「そんなに近くまでいかないよ」 「だめだ」 「ほんの少し、必要な分だけ」 「古い道具を研ぎ直せ。それで十分だ」 「ナギやスノオにそろそろ道具を持たせようって話も出ている。新しい道具が必要なんだ」 「約束してくれ。竜の谷には近づかない。どんなことがあっても絶対に。いいか」 「おじさん。竜は……ドラゴンバードはそんなに危険な生き物じゃないよ」 「約束してくれ。いいか、リヒト。絶対に」 「わかった、わかったよ。竜の谷には近づかない」
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