父の幻影

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 その時になって、ようやくリヒトはジャグラに触れた自分の手がぬるぬるしていることに気がついた。  自分の手のひらを広げてみて驚いた。  べったりついた赤黒い汚れがついていた。 「血?」  あわてて、ジャグラの体をあちこち探るように見た。 「ジャグラ、おまえ、怪我をしているのか?」  よく見ると、首の周りにも翼にも血がこびりついていた。 「何があったんだ?」  ジャグラから降りたリヒトはジャグラを見上げて尋ねた。  ジャグラが長い首を伸ばした。その先を見てリヒトは息を飲んだ。 「ユリア」  倒れているユリアの肩や腕に矢がかすった跡があった。  脇腹のあたりが赤黒く染まっている。 「ユリア!」  白い頬を軽くたたく。  ユリアは目を開けない。  素早く耳の下に指を添え、脈があることを確認するとほっと息を吐いた。  同時に熱いものが腹の底から吹き出してくるのを、リヒトは止めることができなかった。 「誰がこんなことを」  熱いものが腹の底から吹き出してくるのを、リヒトは止めることができなかった。
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