父の幻影

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「ジャグラ。飛べるか? ユリアとオレを山のふもとまで連れていってほしい」  リヒトはユリアを抱きあげるとジャグラに乗せた。 それから自分も飛び乗るとユリアが落ちないよう、抱きしめるように支えた。 「ジャグラ、ゴー。ゆっくり頼むよ」  ぐいん、リヒトの言葉を理解したかのようにジャグラはゆっくり上昇する。 「右へ」  リヒトはジャグラの首の右側を叩いた。  ジャグラは叩かれた方に向きを変え、ゆっくり山のふもとを目指した。 「ドラゴンバードだ」  誰かの鋭い声が聞こえた。 「人が乗っている」 「おおい! ドラゴンバードが来たぞ!」 「矢を持って来い!」 「やめろ!」  リヒトは叫んだ。 「やめてくれ」  ジャグラ、降ろして。 ダウン、とその耳元に叫ぶ。  なぜ攻撃しようとする。何もしていないのに。
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