父の幻影

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また、ユリアと会いたい。  そしてその時、ユリアをがっかりさせないような自分でありたい。 「ピーウィイイイイイイイ」  以前は恐怖に近い思いを抱いていたドラゴンバードの鋭く澄んだ鳴き声を、リヒトはなつかしく愛おしいもののように感じるようになった。  琥珀色の瞳、鋭いくちばしと爪、その気になればひとうちで、木をなぎ倒してしまえるほどの太くて強い尻尾、大きな翼。  その堂々たる姿のなんと頼もしく美しいことか。  それ以上に何度も思い出すのは、ドラゴンバードのジャグラの背に乗ったユリアの姿だ。  いつか、ふたりでジャグラに乗ってどこか遠くへ行ければいいのに。  レオのことなど誰も知らない、新しい場所で二人だけで暮らすのだ。  その甘い空想はリヒトを幸せにした。
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