父の幻影

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 不憫な子だ。  リヒトの背中を見送りながらトワは思う。  周囲の空気を敏感に感じとっていたのだろう。  そのせいでいつまでも周りと馴染めないまま育ってしまった。  母親のミリアが生きている間はまだ良かったが、トワと二人きりの生活になると同時にすっかり口数が減り、感情を表に出さなくなった。  いつか、爆発するんじゃないのか。  きりきりと削った鉱石のような鋭さを秘めたリヒトの瞳を、トワは恐れた。  だが、近頃リヒトは少し変わったようだ。  きつい目がやわらかくなり、唇をわずかにほどいて空を見上げるリヒトの横顔を見るたびに、トワは泣きたいような笑いたいような気持ちになった。  リヒトのやつ、恋でもしたか?
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