23人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
頭の良い君とは同じ高校には入れなかった。
もう会わなくなるんだろうなって思って、あの頃もよく一人で泣いていた。
だから君から「遊びに行こう」と連絡が来た時は、嬉しいなんてもんじゃなかったよ。
友達の多い君にとって、僕といることに何のメリットがあるんだろうと思っていたけど、君がよく笑っていたからそれでよかった。
一緒にたくさんの場所に遊びに行った。多い時は毎週のように会っていた。
念願だった水族館に行った時、カラフルな熱帯魚や愛らしいイルカよりも、君に見惚れてしまった。
多分、あの頃から僕はおかしかったんだ。
君が買ってくれたペンギンのぬいぐるみは、僕の一生の宝物。
今もベッドで干からびたように横になっている僕を、じっと見守ってくれている。
僕は地元で就職して会社の寮に入り、君は都会の大学に進学した。
流石にこんな遠くに行ってしまったら、もう会えないかな。忘れられちゃうかな。
ぬいぐるみを抱きしめながら、僕はたくさん泣いた。
今までみたいに頻繁に会えなくなることが、なんでこんなに悲しいんだろう。
――あぁ、そうか、僕は君のいちばんになりたいんだ。
気付いてしまった感情を封印するように、君の連絡先を消してしまった。
いつか君に恋人ができても、心から喜ぶことなんてできないから。
だからこんな自分の醜さを捨てるには、これしか方法がなかったんだ。
何度も悩んで、悩んだ末の決断だった。
最初のコメントを投稿しよう!