泣き虫の話

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 でも、僕は自分を落ち着かせるよりも先に、伝えたい事がある。  喋ろうとすればみっともない姿を晒すだけ。分かっているけど、一秒でも早く伝えたい。  溢れてしまった君への気持ちは、涙の洪水よりも比にならないくらい激しかった。 「っふ、う、すっ、……ぎぃ」 「だから落ち着けって。ゆっくり息吐けるか?」  届かない。  こんな醜くて汚い「好き」じゃ、なにも伝わらない。  それでも僕は続ける。 「じん、ぐっ、…う、すっ、…うっ、い」 「だから喋るなって言ってるだろ」  たったの二文字だ。  他の文字は削って、いちばん大事な二文字だけを、一文字ずつ、紡げばいいんだ。   「ず、っう…、っぎ」  違う違う違う。  このポンコツ呼吸中枢め。  なんでいつも僕の邪魔ばかりするんだ。 「う、…じん、ぐ、っう……す、っす」 「言う事聞かないなら、もう手段選ばないからな」  舌打ちと共に、君は少し乱暴に言葉を吐いた。 「う、んンっ……」  その一瞬、呼吸が止まった。  君の唇が、僕の唇に触れていて、吐く息を塞いでいる。  意味が分からなくて、余計に呼吸が暴れる。 「俺が吐いた息を、ゆっくり吸って」  鼻を摘まれ、強制的に口呼吸をさせられる。 「フ、っう、…ん」 「そう、上手。……今度はゆっくり吐いて。なるべくゆっくり」 「はぁ、……っひ、ン…」
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