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現代・その1
他者との関わり、それは僕にとっては茨の野を歩むようなものなんだろうと思う。
分厚くゴワゴワとした生地の服にその身を縛られて茨の野の中を歩んでいるようなものなのだろう。
分厚い生地の服は息苦しい。
そんな服を着ていたら、風の爽やかさ、あるいは陽の暖かさを自分の肌で味わうことなんて出来やしない。
ゴワゴワとした生地の服を着ていると動きにくい。
そんな服を着ていたら、自在に手足を動かすことなんて出来やしない。
かといって、その服を脱ぎ捨てしまおうものなら、野に満ちる茨の棘は情け容赦も無く僕の肌を傷付けてしまう。
茨の棘は僕の皮膚に深々と突き刺さり、そして鋭く引き裂いてしまう。
茨の棘は僕に耐えがたい痛みを与え、そしてダラダラと血を流させてしまう。
僕は後悔する。
服なんて脱ぎ捨てるべきじゃなかった、と。
僕は再び服を纏い、黙々と茨の野を歩む。
その服の下にてダラダラと血を流しながら。
裂かれた皮膚の痛みに苛まれながら。
服を脱ぎ去りたいという欲望など、僕にとっては分を弁えないものだったとの後悔に苛まれながら。
僕が他者に対し何かを望んだとしても、それが顧みられることなど無いのだろう。
それが逆に自分自身を傷付ける結果となって返ってくることはあるんだろうけれども。
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