0人が本棚に入れています
本棚に追加
諸君、復活の時は来た。
屈辱に耐え忍び、明日知らぬ日々を過ごす必要はなくなった。ようやく捲土重来を果たす日が来たのだ。
知っての通り、我が国は隆盛を極めるその度に災厄に襲われてきた。
全てを飲み込む洪水と、その後に残る饐えた咽かえるような匂いを忘れたことなど一度もない。父も、母も、弟も皆あの災厄で死んだ。友を肉親を失った悲しみは皆も同じことだろう。だがその悲しみは我らに強さを与えてくれた。この地を再び取り戻すための確固たる決意を、強固たる結束を与えてくれた。
我らはまだ、戦える。
もう一度言おう。復活の時は来た。手を取り合え。我が国が再び隆盛を取り戻すのだ。
ここまで来るのに、実に長い時間がかかった。非情な現実は記憶に、苦痛は記録に。それほどの時が経ち、災厄は過去となってしまった。だが言い換えるならば、あの災厄に恐れ抱かぬ勇敢な戦士たちが集ったとも言える。
諸君、繁殖だ。子孫を、同志を、仲間を増やすのだ。戦争とは数なのだ。
戦いは明日の未明から始まる。
奇しくも先の災厄に見舞われたのと同じ月。
恐れるな。
この梅雨の長雨は必ずや我らに好機をもたらしてくれる。冬の乾燥の間に油断している愚か者に、我らの力を見せつけてやるのだ。
靴下の中に栄光を。
靴下の中に繁栄を。
靴下の中に発疹を。
◇
そんな妄想をしながら、俺はまた水虫と戦う。
最初のコメントを投稿しよう!