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空が明るい晴天のとある日、
教会ヒトマルの門を掃除する一人の少年。
寝癖を整えていない茶髪が風に揺れる。
冷たい海風を浴びた少年が肩をふるわす。
「…うう、さっむ。今日が当番とか、まじで最悪なんだけど。」
そうブツブツと言いながら、門を水拭きする。
彼の名は、ミチユキ。
このヒトマルで暮らす少年少女の中で、1番年上だ。
年は17。
近くのアラミヤ高校に通っている。
今日も、早朝の掃除を終えてから学校に行くため、制服姿だ。
ミチユキが掃除をしていると、教会からこちらに向けて足音が聞こえてきた。
ミチユキがふと、その方向を見ると、ミチユキの鞄を持った双子のツキとヒナが走ってきていた。
小学三年生の2人は、まだ幼く可愛らしい印象をもてる。
ミチユキは二人が鞄を持ってきてくれていると気づいた。
「ツキ!ヒナ!持ってきてくれたんだな、ありが…」
ドテッ!!
大きな音がして、鞄がズズズーっと、地面を擦る音がした。
ヒナが転んだのだ。
ツキが駆け寄るが、ヒナはすでに真っ赤になった膝を抑え、大泣きしていた。
ミチユキも、手を止めヒナに駆け寄る。
「ヒナ、大丈夫か!?」
「うっ、うっ、大丈夫じゃないい!!」
ヒナの膝は、血は出てないものの、見ただけで痛いものだとわかった。
「僕、包帯取ってきます。」
ツキがミチユキに告げ、教会に戻った。
ミチユキはヒナをなだめることしか出来なかった。
「ヒナ〜、もうすぐ治るからな。」
ヒナは、大泣きして答えない。
ツキが戻ってくるのを持っていると、後ろから声をかけられる。
「治して差し上げましょうか?」
振り返ると、男性の顔がすぐ目の前にあった。
「ちっか!!近!!」
ミチユキは、後ずさりした。
覗き込む体制だった男性は、ミチユキに目線を合わせるために膝をついた。
「治して差し上げましょうか?少女の傷。」
「少女?あぁ、ヒナのこと…。」
ヒナを見ようと後ろを向くと、さっきまでそこにいたはずのヒナがいなかった。
「あ、れ?ヒナ、おいヒナー!!」
立ち上がり、必死に呼ぶミチユキの後ろで、ふふっと笑う男性。
笑い声を聞いたミチユキは、男性から距離をとりながら、真っ青な顔で男性を見る。
「…お前だな!ヒナは怪我をして1人で歩けるわけがないんだ!!お前がどこかに連れていったんだろ!!この化け物!!」
思考が停止しかけているミチユキは、朝のはずなのに、夜のように暗くなっている空にも気づく。
気づいた時には、思考が完全に停止し、声が出せなくなっていた。
「化け物とは……。」
ミチユキが空を見た一瞬の隙に、男性がまたミチユキの目の前に立っていた。
ミチユキは息を呑む。
男性のエメラルドグリーンの瞳が笑う。
「君の目は怖がっているね。」
男性の言葉に、ミチユキは振り絞って答える。
「あっ、当たり前だろ…。」
男性が笑いながら離れる。
「ふふふっ、今日、死ぬよ。あの少女も少年も、そして、君もね。」
笑いながら、男性は門に向かう。
ミチユキはハッとして、男性を追いかける。
「何を言っているんだ!?ツキとヒナが死ぬって、それに俺もって…。おい!!」
教会の門をくぐろうとする男性の背中を追いかける。
男性が門をくぐると、ミチユキは目を覚ました。
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