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「ヤマハのVMAXだよ。まったくとんだ散財だな。あの保科郷とかいうヤツに、民事で請求したいところだけど、さて、勝ち目があるかどうか。それに殺された人たちの賠償請求のほうが優先されるべきだろうし。泣き寝入りっぽいよね」
変身ヒーローにはオートバイ。
凱が言うには、ヒーローにバイクは必需品なのだそうだ。
春斗にはそのマシンが、あのロボットと同じ位置づけに思えた。
「もし、もしですよ? 凱さん以上に熱狂的な自称ヒーローが現れた場合、凱さんはどうなるんでしょうね?」
「死ぬんじゃないの? あの自爆したロボットみたいに」
あっさりそう言って、恋二郎はアパートに入っていく。
では、だからこそ、凱は春斗に、誰かに見ておいて欲しがったのだろうか?
せめて誰かの記憶には残っておくために。
ホームズにしろ、どこかのヒーローにしろ。
伝えてもらわなければ、存在しないのと同じだから。
まあ考え過ぎか。
ヒーローオタクのことだから、番組によく出てくる、ヒーローを追いかける新聞記者なんかが、欲しかったのだろう。ゴッコは本気なほど面白い。
しかしこりゃ小説のネタには、なりそうにないなあ、と。
一人で慨嘆して、春斗もアパートの自室に退き上げていった。
《了》
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