序幕 胡蝶の夢の浮き橋

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 人間五十年 下天の内をくらぶれば 夢幻の如くなり  経済大国日本の首都、メガロポリス東京は西の郊外。  世界でも有数の人口密集都市とはいえ、秩父山地が近くなるにつれて田畑や雑木林が増え、人家はまばらになっていく。  とまあ、そこまで西側には行かなくて、かといって都会とはいえない都の外れに。  築二十五年の賃貸アパート『般虎荘(ぱんどらそう)』は建っていた。  古色蒼然、というほどではないが、いかにも古びた感じの外観。一度剥がれたのであろう外壁を塗り直してあるが、素人がやったのか、べったりとやぼったい。  ただ、郊外だけあって敷地が広いのは幸いである。アパートの周囲をブロック塀で囲ってあるのだが、塀の中は普通乗用車を四台は停められるぐらいのスペースがある。あるのに、置いてあるのは自転車が六台ほどだけ。他には奥の塀際に、よくあるスチール製の物置きがポツンとあるだけ。移動は主に原付を使うので、バイクを停められるスペースが必須なのだが、これなら問題なさそうである。
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