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開けっ放しの門を通って、これまた開けっ放しの玄関に入る。
呼び鈴らしきものは見当たらないので、仕方なく声を出してみた。
「すいません! 誰かいませんか? すいません!」
呼びかけてみたが。待つこと1分。誰も出てこない。
さらに幾度か声を張り上げてみたものの、アパート内は無人のように静まり返っている。
(おっかしいな。ちゃんと今日のこの時間に行きます、って連絡したのに)
眉をしかめて、周囲を見回してみると。
玄関入り口のすぐ脇に、電話台のようなミニチェストがあり、その上に『御用の方はベルをお鳴らしください。ただし新聞・宗教の勧誘及びNHKの集金はご遠慮ください』と書かれた札が立ててあった。さらにヨーロッパの貴族が執事を呼ぶ時に使うような、銀色に輝く金属製のベルが置いてある。
しばしの逡巡の末、押してみた。
チ~~~~ンと高く澄んだ音が辺りに鳴り響く。
なんだか不思議な世界へと誘われそうな音色だ。面白いので何度も押してみる。
チ~~~~ン、チ~~~~ン、チ~~~~ン、チ~~~~ン。
「……聞こえてるって」
「うっわあっ!」
背後からいきなり声をかけられて、思わず飛び上がったうえに、飛び退いてしまった。
そこに立っていたのは。壁のように巨大な男。
デカイ。とにかくデカイ。自分も決してチビではないのに、見上げる形になってしまう。タッパがあるだけでなく肩幅も広い。レスラーみたいにがっしりとした体格だ。
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