第一幕 鎌鼬

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「スーパーでバイトしてるんで、消費期限の切れた弁当や惣菜を貰えるんですよ」 「そうなんだ。いいなあ。俺もコンビニでバイトしよっかなあ」 「あ、でもコンビニは店長によってくれたりくれなかったりするらしいですよ。俺が勤めてるスーパーも本当は持って帰るとダメらしいんで」 「でも捨てる弁当なんでしょ?」 「そうなんですよ。でも廃棄品はちゃんと廃棄しないとダメらしいんです」 「なんでなんだ?」 「さあ? はっきり理由を訊いたわけじゃないですけど、持ち帰りを認めると、自分の欲しい弁当をバックルームに隠しておくバイトとか、出てくるからじゃないですか? 調子に乗って五個とか十個とか持って帰るヤツも出てくるだろうし。もう一つは、消費期限ぎりぎりの弁当を持って帰って次の日に食て、下痢でも起こされたら問題になる、ってことでしょうね。警察とか入られたら、評判ガタ落ちだろうし」 「う~~ん、でもさあ、それって自己責任じゃないのか? 消費期限ギリギリってことは、バイトのほうも分かってるわけで。だからこそタダで貰えるわけで。それを次の日まで放置しといて腹を壊しても、スーパーのせいじゃないだろ?」 「でも世間はそうは見ないんじゃないですか? そういう時って、たいてい大きい立場の者を非難するじゃないですか。世間って。ワイドショーなんかとくにそうですけど。廃棄するような食べ物を人にあげるなど言語道断! けしからん! とか言うコメンテーター、絶対にいますよ。事情を知りもしないクセに」 「なんだかなあ。だいたい最近って、どこの会社もエコ活動とか表明してるじゃん。まだ充分食べられる食い物を大量に捨てる行為の、どこがエコなんだよ」 「まったくですね。とくにスーパーは買い物袋持参運動を推進してるクセに、矛盾してますよ。マイ買い物袋運動も、自分たちがビニール袋代を浮かせたいだけですよ。本音は」 「ったく。世の中偽善だらけだぜ。ところでその弁当、うまそうだなあ」 「あ、良かったらもう一個ありますよ。食べますか?」 「マジで? いいの?」 「腹が減ってたから二個食べようと思って、貰ってきたんですけど。この弁当けっこうデカイんで。捨てようかと思ってたとこです。よかったらどうぞ」 「うお、ラッキー。喜んでもらうよ」 「惣菜もどうぞ。こんなにいらないんで」 「三島君! 君はいいヤツだ!」
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