バナナ·ガールのギャル

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バナナ·ガールのギャル

 7月、それはアツい夏・・・のカウント3秒前の様な月でありここ二階建て一軒家の森田一家で学校休みの土曜日に「あ〜、あつ〜」と末信(すえのぶ)は一階のリビングのテーブルで顔を横に付けてくたびれていた。 「これでまだ7月かよ〜、真夏になったら死んじまぜ〜」  愚痴りながらも暑い、  扇風機をうけてもまだ熱い、  アツい、  あツい、  アつい。  頭の中は『暑い』しか考えられなくなっていると、 「ただいま〜」  末信ママと妹が買い物から帰って、なにを思ったか素早く起き出しドタバタと走って向かう。 「ちょっとドタバタ走らないでよん」 「母さんかあさん、冷たいものつめたいものっ、出してっ」 「もう、せっかちねん・・・ほら、ジュース」 「ジュースって、アイスは?」 「あらっ、ごめ〜ん買い忘れちゃった〜ん」 「はぁあっ?」 「そのかわり半額でバナナ買ってきたわよん」  安く買い笑顔でるんるんと嬉しそうにエコバッグから3本バナナを出す末信ママに一瞬腹立つも暑さで怒りが煙のように頭を抜けていき仕方なくバナナを持って元の位置へと戻っていった末信。 「――はぁ〜、なんだよバナナかよ〜」  バナナ、別に嫌いではないバナナ。  バナナ、かと言って好きと言うまではいかないバナナ。  しょうがないと一本目を剥いて一口、すると「うめー」となんともよい甘みを感じる。  日常的にバナナは好んで食べるわけではないためか絶妙なバランスの甘さに食が進みすぐ一本目をたいらげ、続く2本目も美味いと満足し暑さも忘れるほどの美味しさだった。 「うまかった〜!」  このあとの夕食のことも忘れて満足するが3本あった内の最後の1本が目にはいる。  今はもう食べなくても満足だ、しかしかと言って1本だけ残すのもなんとなく心に残ると、 「う〜ん、どうしようかな〜・・・よしっ」  食っちまえと言わんばかり最後のバナナを手に掴み剥いたら、  ボワンッ、と白煙。 「な、なんだっ!」  手に持つバナナから勢いよく何者かが出て来たような気がした。  パンパカパーンのメロディ、  パンッパンッとクラッカー、  チリンチリーンと鐘の音、 「おんめでと〜」  驚きのあまり声も出ない末信。目の前に現れたのは魔女みたいなバナナの帽子にオレンジ髪、バナナのデザインのローブと茶色肌の女の子・・・いや、ギャル。
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