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アナタみたいになりたい
「ナナさんって、なんていうか〜、大人なんですね」
「そう? あたしは桜子ちゃんのほうが大人に見えるな〜」
「そんなこと、ありません。私は人苦手だし、上手くコミュニケーションとれないし・・・だから友だちも・・・」
「んなこのナイナイ、あたしとコミュニケーションとってんじゃん?」
「それはナナさんが、なんていうかお姉さんみたいな感じがして、フレンドリーで、やさしいから・・・うらやましい」
話しているうちにみるみると桜子は下をむき出しまるで自分を咎めるような顔に。
「あたしだって、桜子ちゃんはいいな〜って思うことあるよ」
「え、わたし?」
驚く桜子、笑顔のナナは椅子に寄りかかって天井を見ながら話し始めた。
「だってさ〜、おっとりして、静かに本を読んでて、勉強も出来て、文句の付け所もないわ」
「そんなっ、そんなこと、言われたことない。わたしは自分が、好きじゃないから」
「少しは自分を褒めてあげれば?」
思わず桜子はナナの目を見た。
「それって、どういうことですか?」
「桜子ちゃんは自分の出来ない事があるたびに自分を嫌いになってるのよ」
人間はもともと不完全、出来る事できないことは生まれたときからほとんど決まってる。もちろん出来るようになる事は成長過程の中であるが、大半は出来ないまま終わるとナナ言う。
「じゃあどうすれば自分を、許せるようになるの?」
「人に頼ればいいわ」
どういうことと頭をかしげる。
「出来ないことは1人で悩まずちゃんと知り合いや先生に相談、んでっ教えてもらったあとは感謝、これだけよ」
「人に、頼る・・・」
「うんっ、出来ない自分を咎めることに時間を費やすんじゃなくて、頼った人にひたすら感謝したほうが両方のためになるとあたしは思う」
ナナの言葉が頭を巡った桜子だった。これまで、ここまで自分の気持ちを打ち明けたのは父親以外いなく徐々に別の気持ちが芽生え、
「いいな〜、わたしナナさんみたいになりたい」
「ほーう」
両眉が動きながら目が輝いた。
「あたしみたいになりたいのね桜子ちゃん、よっしゃまかせなさーい――」
「あ〜あ〜、最新の魚図鑑でも3000円以上するのか〜・・・金ねえし、トホホッ」
トイレの帰り、あれからスマホで調べるもチョビチョビ小遣い制の末信にはどうしようもなかった現実に直面していた。
「もうすぐ夏休みだし、バイトでもすっかな〜、ん?」
教室を出たナナとすれ違い、
「また来てたのか〜」
「まあねん、もうそろそろ授業の時間よ」
「んあ、ああそうだな」
「頑張りなさい、高校生君」
わかってると言ったあとどうしたのかルンルンと帰るナナに一体なんなんだと気になる末信だった······。
そして土曜日······。
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