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出ていったナナ
ザーッ、
あいにくの雨で夏の季節だからより強い。
「母さんおはよう」
「おはよう、末信」
よく聞こえる雨の音、
ご飯と味噌汁と納豆が並んでいて静か、
なんだか久しぶりな気もする。
それもそのはず、
「あれ、ナナは?」
朝から精霊でありバナナ·ガールというナナの姿がなく、それで静かなんだと感じたようだ。
「ナナちゃんは・・・」
「んあ、ナナがどうかしたのか?」
千夏もなぜか暗い、まさか、
「おい、母さん!」
「ナナちゃんは、出ていったわ」
「はぁっ? まじかよ······」
ピンポーンッ、
「はーいっ」
「桜子ちゃん? ナナでーすっ」
ドア開けるとおじゃましますと中に入るナナ。狭い玄関だがそれは桜子の家系に関係がある。
「こっちです」
「はいはい〜」
テレビとテーブルが置かれた部屋の隣にはピンク色の装飾がちらほらある、どうやらここが桜子の部屋のよう。
「ごめんなさい、部屋が狭くて」
「うんうん、気にしてないよ」
「その・・・お父さんは私を男手一つで育ててくれたから」
「そっか、パパさんすごい人なんだね」
「うん!」
大好きなお父さんの話をする桜子は短くもナナが見た中で1番の笑顔をしていた。
「ではでは、ムッフッフッフッフッ、覚えているわよね〜桜子ちゃん?」
「は、はい、『ワタシはナナみたいになりたい』ってホントです」
その約束のために今日は早く桜子の家に来たのだ。早速はじめと言わんばかりに鏡の前に桜子を座らせ背中から布を出した。
「黒い布? ナナさんいったい・・・」
「だいじょうぶだから、んじゃ被せるわよ〜」
「え、キャッ」
ちょっと驚いた桜子だがノリノリのナナ、
「じゃあっ、始めるわよお化粧開始っ!」
顔に何かされると布の中で目をつぶったのだが、
「ナナさん、肩揉みですか?」
「まずわね、だって学生だもんずっとタブレットとか見て疲れてるんだから」
「は、はあぁ」
化粧ではないのか、どういうことだろうとハテナがたくさん降り注ぐもとにかくナナに任せることにした。
「お次は目よ〜」
「ああ、気持ちい〜いです〜」
両頬のチョイ上を両手でマッサージしていくと不意に、
パチンッ☆
となにかの音を感じた桜子。
「なんか音がしたようですが」
「な〜に、美人になるおまじないをしただけよ、はい、終わり」
「も、もう終わりなんですか?」
体感時間にして5分経てばいいくらいで黒布が脱がされる。
「それっ!」
鏡で自分の顔を見た桜子は、
「これが・・・あたし!」
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