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ギャルの誕生
そこに映るのはこんがり焦げたような茶色い肌を触って何度もたしかめ、パッチリ二重とつけまつ毛のギャルが、自分がそこには映っていた。
「あ、これは」
「アイシャドウはナチュラルなベージュってとこ、どう?」
「あ、ありがとう、ナナさん。あたし、こんなにしてもらえるなんて思ってなかったら」
だが喜びと同時に、
「でもどうやってあんな短時間で・・・」
「未知の自分に驚いたでしょっ? 桜子ちゃんにはまだまだ可能性があるってことよ。それと時短のことは乙女の企業秘密よ企業秘密♡」
疑問。しかしそれを何とか大笑いしてその場を誤魔化すナナ。
「そーんーなーこーとーよーりー」
ニヤついて桜子を見ると彼女もその迫力にドキドキ。
「外へ出るわよっ」
「は、はい」
ギャル2人は外へと赴くのだった······。
「は〜い、お昼よ〜」
カタッ、とお皿を置いていく。
「わ〜い、お昼〜」
嬉しそうな千夏と下りてきた末信。今日の昼はハンバーグに人参が乗っていて、野菜と福神漬けである。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんご飯だよ」
「あ、あ、わりぃ」
「な〜にぼうっとしてんだか」
妹の言葉で気がつくがそれは自分がナナが出ていった事を気にしているのかとも思ってしまう。
そりゃ最初は悪い奴かもなんて思ったりもしたけど今のところそんなこともなく、うまく馴染んでたと感じてたのに、なのに黙って出ていくなんて。
再び考えてしまうと箸の手は止まり千夏に怒られ食べだす。
「「――ごちそうさまでした」」
ご飯を食べ終えた末信は外に出ると激しい雨は止んでいた。空は一気に晴れギンギンの太陽は人間の温度を上げていく。
「暑くなるか、こりゃすぐ部屋に」
家のドアを開けて体半分を入ったところで後ろを振り向くと、
「まっ、しかたねえな」
と言って家の中へ。
「フーンッ、平気な顔してたクセして傷ついたのかよ、ならそう言えってんだ・・・へんっ・・・たくよ」
寂しいのか悔しいのかブツブツと吐きながら自分の部屋へと階段を上がっていく。
――ガタンガタンッ電車の音、変わらずよく揺れる。2人は運良くロングシートに隣どうしで座れたようだ。そこで桜子は気になったことを聞いてみた。
「あの、ナナさんは森田君の家族と一緒に暮らしてるんですよね」
「そ〜よ〜、ここのアイシャドウがいまいちかな〜」
手鏡で自身を見ながら話す。
「なら皆んな今日のことは」
「知ってるよ、知らないのは末信くらいかな」
「いいんですか? 話さなくて」
「いいのよ、少しくらいわね、ウフフッ······」
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