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海とバナナ草のネイル
「――じゃ~んっ」
「「うわっ、すごーいっ!」」
「海とバナナ草のネイルよ、どお? メッチャかわいいでしょっ」
うんうんと頭を振る女子たちは熱心に謎の女子高生ギャル·ナナの爪に夢中になっていた。
「もしかしてナナさんってプロですか?」
「プロっていうか〜」
うっかり精霊と言いそうになるが止め興味を持つ女子たちにやり方を教えていた。
だが左腕を捕まれ「あり?」と掴まれた方を見ると炎をたぎらせ怒っておるような末信に「ちょっとこっち来いっ!」と引きずられると、
「あ〜れ〜」
「「ナナさんっ!」」
「みんなまーたね〜」笑顔で右手を振った······。
ガタンッ、教室の扉を閉めて廊下で、
「おまえ何やってんだよ」
「ホイッ、ネイルよネイル。みんなにススメてたの、きれいでしょ〜、海とバナナ草」
「ん・・・ん〜、たしかにきれいだ」
「でしょ〜、ハハッ」
「ハハハハっ・・・じゃねえよっ、なんで学校に来てんだよっ!」
「だって興味があったんだもん」
「きょうみ〜? 家の手伝いは」
「それはママっちが『手伝いはいいから、学校に興味があるなら行ってみればん?』って言ってくれたの」
そういうことかと母さんになんて余計な事をと頭を抱えて、
「とにかくおまえはとっとと家に帰れよ」
「え〜どうしてよ〜」
「正体がバレたら色々面倒くせーだろ」
「だいじょぶ、言わないから〜」
「かえれ」
「だいじょうぶ」
「帰れっ」
「大丈夫っ」
「帰れって」
「コホンッ、もう授業が始まりますよ末信君」
説得しているうちに学校のワインレッドのスーツを着た和林先生が現れ、
「あっ先生、すぐ戻ります」
「おや?」
和林先生はナナに顔を向けた。
「あなたは・・・みない生徒ですね、ホントにここの生徒ですか?」
「あ〜・・・ははっ、授業ですよね、ははっあしからずー」
怪しまれたつつもその空気を瞬時に悟り場を離れたナナは階段を早々と下っていった。末信も、もう来るなよ〜と心底祈って。
「――ふう、あぶな」と階段を下りていると教室の方から、
「みんなっ、時間は有限です。なのでテキパキと動きましょう、タブレットを出して授業を始めますっ!」
気合の入った和林先生の声。
「お勉強か〜、未来は君たちに掛かっている・・・なんちって、みんなガンバッ」
こっそりと応援するナナは邪魔にならないように静かに学校を抜けて森田家へ······。
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