441人が本棚に入れています
本棚に追加
太郎は経路の変更を迫られたことに気づいた。
だが博多以外ではどこに上陸していいか分からない。
「島津に交渉して、直接高天原に向かうのは難しいのか」
健が横入りして聞いてきた。
「そうか隆佐殿、堺で島津と商いをしている商人はいますか?」
「いるとも。自連とも馴染みの深い男や」
「誰ですか?」
「納屋助左衛門、別名呂宋屋助左衛門。あの男なら琉球交易を通じて島津とも親交がある」
納屋助左衛門は勝悟が孫一を尋ねたとき、本願寺まで道案内をした男だ。
あの頃はまだ駆け出しの商人だったが、今は成功して堺でも押しも押されぬ大商人に成り上がっていた。
太郎は隆佐に助左衛門に会う段取りを頼んだ。
納屋助左衛門は、顔が大きくて顎が割れている、男臭くて押し出しの強い男だった。
太郎たち一行は、小西隆佐の紹介で助左衛門の屋敷に来ていた。
挨拶もそこそこに、太郎が島津への仲介をお願いすると、助左衛門はおもしろそうな表情で、太郎たちを見た。
「大人は一人だけで、後は子供か。ほんまに日向まで行くつもりか?」
「はい。我々ももう十二才ですから、そこまで侮られることはないと思います。それに子供の方が、島津の警戒心も緩むのではないですか」
太郎のしっかりした口調に助左衛門は目を細める。
最初のコメントを投稿しよう!