第2話 島津

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「島津は戦が強い。兵一人一人が精強や。一対一で戦うたら畿内の兵は島津兵に勝たれへんやろう。ただ畿内に比べると人の数が絶対的に少ないさかい、兵の数も限られてくる」 「謀略はどうですか?」 「あまりせえへんな」 「家中の結束はどうですか?」 「強い。特に義久、義弘、歳久、家久の四兄弟は鉄の結束や。四兄弟の中では、やっぱ次男の義弘の武勇が凄い。鬼島津やらと呼ばれとって、家臣からの信望も厚い。せやけど近年は家久も強い武将に成長して、龍造寺を破った沖田畷(おきたなわて)の戦は見事の一語につきる。明るいさかい家臣の人気も高い」  助左衛門は四兄弟の話をするときは楽しそうだった。  きっと、気に入ってるのだと、太郎は思った。 「会えますかねぇ」 「どうやろうな。今筑前に向けて兵を出してるさかい会うのはややこしいかもな」  助左衛門は難しいと言ったが、太郎は会える気がした。  天下に覇を轟かそうと言う武将たちだ。  きっと引き合わせがあるはずだと、密かに思った。 「まずどこに向かえばいいですか?」 「まずは薩摩の内城に向かお。長兄の義久がそこにおるはずだ。義久に高千穂の調査の許しを貰えたら、再び船で日向に向かったらええ」 「分かりました。万事お願い申します」  段取りは揃った。  太郎たちの思いは既に堺を離れ、遠く九州にあった。
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