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「やめなさい。健はそういう顔似合わないから。もっとワクワク、ドキドキって顔があんたの顔でしょう」
碧の言葉に愼や春瑠が妙に納得して頷く。
仕方がないので、健は顔を作るのをやめた。
「助左衛門殿、薩摩には博多のような大商人はいないと聞いていますが、我々はまず誰と会うのですか?」
その国の商いに興味がある愼は、大商人がいない国と聞いて、心配したようだ。
「国の民全てが侍みたいなとこやさかいな。商人が育たへんのは無理もあらへん。琉球との交易は島津家が直接やってるさかい、わしも島津家相手に交渉してる。今日会うのは長寿院盛淳ちゅう、交易を含めた内政を行う者や」
さすがは九州最強を目指す家である。
太郎はそんな家中で、内政に骨を折る盛敦の苦労を思った。
父勝悟は戦の帰趨は個の武の強さではなく、最終的にその国の経済力次第だと、常に太郎に教えていた。
島津がこれほどの勢力拡大を行えた背景には、表には出ない盛敦の貢献が大きいのではないかと想像した。
船が港に着いて上陸すると、早速盛敦が迎えに来てくれた。
「助左衛門どん、お久しゅうごわす」
助左衛門を見る盛敦の顔は、親友に会う者のそれだった。
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