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「こんた遠かところをよう来られた。おいは島津家次男義弘でごわす。つっにおっとが三男歳久、いっばん向こうが四男家久じゃ」
義弘が如才なく話をするのに対し、三男歳久は冷静で頭が回るという感じだが、決して冷たい感じではない。四男の家久は、沖田畷で龍造寺隆信を屠った英雄だが、一見するとおとなしそうな男だ。いわゆる猛将の類いの雰囲気はない。
「ところで、おはんらまだ幼かにも関わらず、九州ん地まで足を伸ばしたんな、どげん目的があってんこっか」
義弘が旅の目的を訊いてきた。
ここはしっかり説明をして、理解を求めねばならないと健が気を揉むと、太郎が自分が説明するぞという意思を含んだ視線を送ってきたので、思わず頷いた。
「私たちは高千穂に参ろうと思っています。高千穂は、京に御座す帝の祖先が生まれ育った高天原ではないかと、言われています。私たちはその真偽を調べて、高千穂が高天原であれば、帝について知りたいと思っています」
島津の兄弟たちは、太郎たちの目的が都の帝に絡んでいると聞き、さすがに予想していなかったのか一様に驚きを示した。
義弘は遠慮がちに、なぜ帝について調べねばならないのか訊いてきたので、太郎は推測ではあるがと断ってから、自連の国是とそれに対する帝の関与についての疑いを話した。
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