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彗星と帝との関係の件では、あまりの現実味のない話に、向かいの三人が口々にまさかを連発した。
しかし、そのまさかの話で、この子たちははるばる駿河の国からやって来ている。
少なくとも自連にいる当事者たちには、この話について信憑性を感じているのだろうと思ってくれたのか、最後まで太郎の話を聞いてくれた。
全てを話し終わると義弘は大きくため息をついた。
「まったくおとぎ話を聞かさるようであった。我々は遠か都に御座す帝については、よう知らんからないとも言えん。だが、はっばっ国んためにここまでやって来た、お主たちんために力になろう」
どうやら義弘は我々のために協力してくれるらしい。
健はさすが太郎と、きちんと説明し終えた友が誇らしかった。
「いっつか聞いてん良かか」
三男の歳久がもう我慢できないという風に訊いてきた。
「はい、何なりと」
太郎も如才なく対応する。
「帝がどげん力を持っちょっかは、我々には想像もつかんで、そんこっは聞かん。だけどお主らはそこまで強か力に脅かされながら、ないごて民に主権を与えようとすっ。こん戦国ん世であれば強か王に導かれた方が、民も幸せじゃなかんか」
健は歳久の表情を窺った。その顔は領主の権限を守るために反発するのではなく、純粋に好奇心から訊きたがっているように見えた。
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