第3話 鬼の素顔

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「私は真野勝悟の息子に生まれ、この世のことをいろいろと教わってきました。だがもし普通の民の家に生まれ、何も知らないまま責任は全て領主に押しつけ、どうしてそうなったのか分からずに、ただ理不尽に耐えねばならないような一生は送りたくありません。その思いはみな一緒なのだと思います。だからみなが平等に知る機会を持ち、自分の考えに従って自発的に生きることができる我が国を支持します」  一つ一つの言葉は難しくてよく分からないが、太郎が言いたいことは健にもよく理解できた。その通りだと思ったが、歳久はまだ納得がいかぬようであった。 「だが実際には全てん民にもんを教え、考えを育つっことは金が掛かりすぎてできらん。お主ん国には真野勝悟ちゅう類い希な才ん持ち主がおったで、そうしきっんであろう。であれば、これからも真野勝悟が全てを取り仕切っ方がよかとじゃらせんか」  それは違うと健は思った。結局一人でできることは限られると教わったばかりだ。 「一人でできることなどたかがしれています。自連の経済は父の才よりも、金を作り出すことに長けた者を見いだし、任せたことで今の繁栄が作り上げられました。そして規模が大きくなれば、どんどん人が足りなくなります。だからこそ人を育てることが大事なのです」
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