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「・・・? なに?」
「哲也さんたちから、無事に生還したお祝いだって。瞳の好きに使いなさい」
お年玉用のポチ袋は、かなりの厚みがあった。中身を取り出してみると、四つ折りにされた一万円札が五枚も入っていた。
瞳は、裕福な家庭の一人娘なので、お小遣いも十分にもらっている。それでも、十三歳にとっては、五万円は高額な臨時収入と言えた。
無意識にも、顔がほころぶ。
そんな瞳を見て、両親は一様にほっとした表情になった。
「さ、瞳。お腹空いてない? なにか準備しましょうか」
母親が、その場の空気を入れ替えるような、明るい口調で言った。
瞳は、少し元気が出たので、
「じゃあ、パンケーキ。冷蔵庫に入ってたマスカットも食べたいなあ」
と素直に甘えた。
母親はにっこりと笑い、キッチンに向かった。
「じゃあ、パパは、瞳に紅茶を淹れてあげようか。アールグレイでいいかな?」
アールグレイは、瞳の好きな銘柄だ。瞳は、笑顔で一つ肯いた。
高橋家に、ようやく、いつもの家庭の雰囲気が戻ってきた。
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