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 一学期の期末試験が近い時期だった。  その頃の瞳は、学費が高額なことでも有名な、さる名門女子高に通っていた。その日は、試験勉強を口実に、自室に引きこもっていた。  トイレに行きたくなり、部屋のドアを開けようとして、瞳は途中で手を止めた。トイレに行くまでの廊下の隅に、男の姿が見えたからだ。  だが、そこにいたのは男だけではなかった。父親も一緒だった。  瞳が、薄くドアを開いたまま耳を澄ませていると、二人がぼそぼそ話す声が聞こえてきた。 「すごいですね、そんなに?」 と父親。  それに対し、男が、偽りの謙虚さと(少なくとも瞳には)分かる声色で答えた。 「いやあ、たいしたことありませんよ。投資で稼ぐなんて、コツをつかめば誰にでもできますから」 「そうですか・・・いやはや・・・それにしても、たいした額だ」 「良かったら、俺が手ほどきしますよ」 「本当ですか?」  父親の飛び付くような声が、なぜか、瞳の不安を煽った。
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