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梅とアサリのスープとクズ男 ②
「……音さん、……琴音さん、起きて下さい」
優しく揺すられて私は重い瞼を開けた。
見慣れない、茶色い木目の天井が目に入ってくる。
起き上がろうとしても、体が布団に縛り付けられているように重い。
「琴音さん、起きられますか?」
私は瞳だけを動かしてその声の主を見る。
一つにまとめられた所々に白いものが入った艶やかな髪。セルフレームの黒いメガネ。その奥の黒い瞳は穏やかな優しさを湛えている……。
「……うっ!」
飛び起きようとして、私は思わず頭を抱えた。
脈拍と共にズキンズキンと頭の中を痛みが走る。
「大丈夫ですか?」
結局、彼女に体を起こすのを手伝ってもらう。
「すみません……」
確かあの後ハイボールを更におかわりして……。
「琴音さん、調子の悪いところ、ごめんなさい。お店を開ける準備をしなければならないので……」
「ああ、ごめんなさい! ……あうっ!」
再び起きあがろうとして私は顔を歪めた。
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