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「お前、何やってんだ?」
白黒の猫を抱き上げながら、佑弦さんはガラスの向こう側で大きなため息をついてみせた。
「へえ、迷い猫!」
白黒猫は佑弦さんの膝の上で丸くなりながら、気持ち良さそうに小さな欠伸をした。
そう言われれば、猫は赤い首輪をしているけれど、何だか痩せていて毛の艶もあまりないように見えた。
「今日はちょうど物流センターの仕事が休みだったから、響子さんに動物病院に連れて行くよう、頼まれたんだ」
佑弦さんの白い指先が猫の喉元を優しく撫でる。
「元は飼い猫。だからこんなに人慣れしてるんですね」
私が毛の塊の方へ手を伸ばそうとすると、猫はピクリとしてから、勢いよくフローリングの床の上へ飛び降りてしまった。
「おまえ、猫にも嫌われてんのかよ」
佑弦さんの言葉に、今度は私がピクリとなる。
もって何? もって!
私が佑弦さんを睨みつけていると、玄関のチャイムが鳴った。
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