辛口ジンジャエールと本当の自分 ⑤

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辛口ジンジャエールと本当の自分 ⑤

「お先に失礼しまーす」  私はレジに向かってそう声をかけると、出入り口に足を向けた。  ふーっ。  コンビニを出てから私は大きく息を吐く。  自動釣銭機は間違いがなくて便利だけれど、何かあった時に対応できずに慌ててしまう。  お客さんの対応中にエラーが出たりなんかすると、本当に焦る。  駅近のコンビニは急いでいるお客さんが多いから、レジ操作がちょっとでもモタつくと、お客さんの顔が怖いのだ。  エラーが出たりすると私はパニックになって、直ぐに他のスタッフを呼んでしまう。  面接時、ワンオペのシフトにはならないと言われていたけれど、早く仕事を覚えないと、あまりシフトも入れてもらえないだろうし……。    今のところ、Wワークをしていても、ひと月のお給料はシノハラフードに勤めていた時よりも少ない。  当然ボーナスもないし、健康保険料も高い。  もっと頑張らなくっちゃ。  一人気合いを入れていると、ふと目の前に立ちはだかる人影に気づき、足を止めた。  私はゆっくりとその人に視線を向ける。  そして、その黒い瞳を捉えたその瞬間、私の心臓がドクリと大きな音を立てた。   「しょ、翔真(しょうま)……」
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