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どうしよう……。
あたしは落ち着かない気持ちで、ゆらゆら揺れる吊り革を握り締めていた。
一緒に揺れる手のひらには、後から吊り革を使う人に申し訳ないほどに、手汗が滲んでいる。
駅に停まる度にシュウと音を立てて開閉する扉にイライラしながら、あたしはうさ耳のついたスマホを手に取った。
その後、メッセージは入っていないみたい。
何でこんな時に限って智君と喧嘩しちゃったんだろう。
けど、今の今でさすがに智君に連絡を取る訳にはいかないし……。
窓の外に目をやると、スカイブルーソーダ色の空にはミルクアイスのような雲がふわふわと浮かんでいる。
急いで改札を抜けると、あたしはバッグから再びうさ耳を取り出した。
今、お父さんがスマホをいじれる状況にあるのかわからなかったけど、とりあえず「駅に着いたよ」とメッセージを入れておく。
地図アプリを立ち上げて目的地の場所を確認していると、スマホがピロンと音を立てる。
そこに表示されている文字をゆっくり目で追ってから、あたしは、はーっと大きく息を吐いた。
何だか全身の力が抜けてぼうっと立ち止まっているあたしに、駅から出てきた人が後ろからぶつかっていく。
「うわっ!」
反動でスマホを取り落としそうになって、あたしは慌ててふわふわのぬいぐるみ生地でくるまれたそれを受け止めた。
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