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「……森本さん、すみません」
私と響子さんは二人して、常連の男性に頭を下げてみせた。
「良いって事よ。それより姪っ子さん、早く帰ってくると良いね」
「ありがとうございます」
私達は、通りの向こうへ消えてゆく森本さんの後ろ姿にもう一度頭を下げた。
「琴音さん、ありがとう。後は私達で何とかするから」
響子さんの言葉に私は首を横に振った。
「大丈夫ですよ。明日は休みですし」
あれから響子さんはオーダーを間違えたり、ボーっとしてしまったりと、何だか私にはそっちの方が心配だった。
ちょうどお客さんも少なくなってきた事だし、早めにお店を閉める事にしたのだ。
その後、果音ちゃんは涼子さんという、昔響子さんがやっていたバンドでキーボードを担当していた女性のライブに、一人で行っていた事がわかった。
佑弦さんもそこへ向かったのだけれど、入れ違いでライブハウスを出た後だったらしい。
「もうお店閉めるの?」
背後からかけられた舌足らずな可愛らしい声に、私達はビクリとして振り返った。
「果音!」
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