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響ヶ町とは違い、夜が更けてきても煌々と街の明かりが灯る通りからは、人々の賑やかな声が途絶えない
どのくらい歩いたのだろうか、何だか足が重くなってきたように感じ始めた時、ふいに佑弦さんの低い声が静かに耳に届いた。
「……お前、『NOZOMU』ってシンガーソングライター知ってるか?」
そう訊かれて直ぐに答えられなかったのは、佑弦さんの質問があまりに唐突だったから、というのもあるのだけれど、私の知っている『NOZOMU』と佑弦さんの言っている『NOZOMU』が同じ人物を指すとは思わなかったからだ。
「……あれ、俺のやってたバンドの元ギタボなんだ」
「えっ?」
私は思わず直ぐ隣で揺れている整った顔を見上げる。
その横顔は真っ直ぐ前に向けられていて、何を考えているのかわからない。
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