アサリの中華スープと大切なもの ②

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 ふっと口角が緩められると、いつもの低く穏やかな声が耳に届く。 「……リッスーのくせに」 「なっ……、人が真剣に話してるのに!」  思わず私は抗議の声を上げる。  けれど佑弦さんは何も言わず、黒髪を揺らしながらスタスタと歩き出してしまった。  手首を掴まれたままの私は、仕方なく彼の後を追う。  けれど、さっきまでヒヤリと冷たく感じていた私の手首を握る指の先が、ほんのりと熱を持っているのに気づいてしまった。  そして通りを行き交う車の音の隙間から聞こえてきたのは、やっと感じ取れるといった程度の掠れた声。 「……ありがとう」  私が驚いて見上げてみても、その唇はすでにきゅっと閉じられた後だった。  でも、鈍く輝くシルバーのピアスがつけられた耳の先が、ほんのりと赤くなっているところを見ると、きっと聞き間違いではなかったんだろう。
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