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「こんなひよっ子を寄越すなんて、うちも舐められたもんだな。こっちはプライドを持って野菜作ってんだ。都合のいい時だけ納品してくれってんなら他を当たってくれよ」
木枯らしが吹きすさぶ季節になってもまだ焼けたような黒い肌をした男性が、額に刻まれたひだを更に深くしながらそう言った。
山から吹き下ろされてきた風が、ビニールハウスをバタバタと激しく揺すりながら吹き抜けていく。
そのすぐ脇で冷たい風に震えながらも、私にできる事といったら「すみません、すみません」と頭をひたすら下げ続ける事ぐらいだった。
けれど、大塚さんの言っている事は最もだった。
前任者のミスにより、いつも野菜を卸して貰っている他の大手農場と大塚農場の納期が被ってしまったのだ。
大手農場とは今後の付き合いもある為、極端に仕入れの数を減らす訳にはいかない。
結局、過剰在庫を避ける為、大塚農場からの仕入れは買取補償量の最低限ギリギリになってしまった。
おそらく余った分は安く他に卸したか、廃棄処分したのだろう。
当然、大塚農場としては、利益は殆ど上がらず、これ以上当社との契約を続けるメリットは感じないという事だろう。
そして、今までと変わらず上から目線の更新内容を、特段有能でも無い平の私に持たせて謝罪に向かわせるなんて、社としては、中規模農家である大塚農場との契約更新にはさして重要度は置いていない……、という事なのだろう。
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