カレースープとNo.30 ③

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 クリスマスイブの最終電車には、幸せそうに寄り添うカップルが一杯だった。  私がそれらから目を背けるように窓ガラスに視線を向けると、疲れた顔をしたアラサー女と目が合ってドキリとする。    クリスマスとかもうすぐ30歳とか気にしない、なんて言っておいて、凄く気にしてるのは自分自身だ。  私はいつの間にこんなビビリになってしまったのだろう。  自分の思惑に絡まって動けない。  動けなくなっているうちに、鈴木さんのような自分の感情にストレートな人に、大事なものを掠め取られてしまったのかもしれない……。    イチャつくカップルを視界から追い出すために、私は鞄からスマホを取り出した。  その中に見慣れた相手からのメッセージを見つけて、心臓がトクリと鳴った。 『仕事のきりがつきそうだから、28日会えないかな?』  あれから引き継ぎで忙しい俊介とは会っていない。  29日に俊介は北海道へ行ってしまうのだ。  そして29日は私の誕生日でもあった。
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