チキンライスとモブ男 ①

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「明日も飲み過ぎんなよ」  佑弦さんが呆れたような視線を向けてくる。 「わかってるって!」  そう、明日は響子さんの家で新年会が開かれるのだ。  新年会と言っても、何となく誰かがやって来て、お酒とかお料理とか、適当にみんなが持ち寄って、気が付くとどこかで誰かが歌を歌っていたり、何かを演奏していたり……、そんな感じらしい。  初めのうちはお店でやっていたのだけど、酔い潰れた誰かを家まで運ぶのが面倒になったので、響子さんの家でやるようになったのだそうだ。  確かに響子さんの家は広い。一人で暮らすには広過ぎるくらいに……。  果音ちゃんが彼氏の智樹(ともき)君と一緒に来る、とは言っていたけれど、果音ちゃんのお母さんはどうなのだろう……。  響子さんとは実の姉妹の筈なのに、お正月の挨拶に行かなくても良いのだろうか。  普段から果音ちゃん以外の身内の人が出入りしている様子は見られない。  果音ちゃんのお母さんは響子さんのお店をあまり良くは思っていないようだけど……。 「……ねえ、響子さんってずっとあそこに一人で住んでいるのかな?」    佑弦さんの視線が乾いたアスファルトの上に向けられると、長い睫毛が少し思い迷うようにゆっくりと伏せられた。  そうだった。「音の食堂」はをもっていつも私を温かく迎えてくれていた。  こちらが喋りたい時はいくらでも聞いてくれるし、そうでない時は余計な詮索はせず、ただ優しく受け止めてくれる。  それは私にだけではなく、という事だ。  軽々しく人のプライベートな事に口を挟むべきではなかった。  また佑弦さんに嫌味を言われてしまう……。  彼の横顔をチラリと覗き見ると、形の良い唇が小さく開かれた。
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