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「しみず」さんがシフトに入っている毎週月・水・金曜日、会社帰りにコンビニに寄って買い物をするのが僕のルーティンだ。
そしてその後、向かいにある、コンビニの中まで見通す事のできるカフェで、彼女の働く姿をゆっくりと堪能してから彼女の退勤に合わせて駅に向かう。
彼女が私鉄の下り方面の車両に乗り込むのを見届けてから自分のアパートへと帰る。
それが僕の密かな楽しみだった。
僕はあくまでも、彼女が悪い奴らに引っかからないようにボディーガードとして後ろをついて行っているだけだ。
彼女が電車から降りた後、無事自宅まで到着できるかとても気になるところだったけれど、これ以上ついていったらストーカーになってしまうからね。
僕はあくまでもボディーガードとして彼女の後をつけているだけなんだ。
僕はガラス張りの扉の前で、風にカサカサと揺れているお知らせの紙に目をやった。
『閉店のお知らせ
平素よりカフェペンギンの家 響ヶ町店をご利用いただきありがとうございます。
誠に勝手ながら12月31日をもって閉店させていただきました。
長らくご愛顧いただき、心から厚く御礼申し上げます。』
テーブルやメニュー表等の備品を運び出してしまった店内は、何だかとても古めかしく見える。
僕がいつも「しみず」さんを眺めていた、通りに面したカウンターテーブルも、椅子が運び出されてしまった今は、ただの傷だらけの板切れに見える。
どうしようか……。
僕はもう一度コンビニを振り返る。
「しみず」さんは品出しでもしているのだろうか、ここから見えるのはもう一人のおばちゃん店員だけだった。
コンビニを窓から眺める事ができるのは、この辺りの飲食店の中でも閉店してしまったこのカフェだけだ。
それはもう以前に確認してある。
かと言ってここでずっとコンビニを眺めているのも、おかしな人だと思われてしまうし……。
そして実はもう一つ、僕が楽しみにしていた物があったのだ……。
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