チキンライスとモブ男 ②

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 2枚ある扉を抜けて店内に入ると、そこは落ち着いた大人の時間が流れていた。  キッチンを含めても20畳ぐらいしかないスペースでは、数名の男女がゆったりと食事を楽しんでいるようだった。  狭い店内に並べられた年季の入った木製のテーブルも、擦り切れた赤いソファーも、何だか昭和感満載で、老舗のバーといったいった感じだ。  チキンライスが好きなお子様が、気軽に入る店ではないような気がした。 「いらっしゃいませ」  僕が躊躇っていると、黒いカフェエプロンをつけた整った顔の男が声をかけてきた。  若い女の子店員ではなくて、僕はほっと胸を撫で下ろす。  男性店員の、変に愛想のいい笑顔を浮かべるでもない——悪く言えば事務的な対応も、僕にはかえって都合が良かった。 「カフェペンギンの家」の店員達は皆、貼り付けたような営業スマイルを浮かべていて、慣れるまでに随分と時間がかかってしまったのだ。  とりあえずスープご飯を食べてから、これからの事は考えよう。  僕は、一番端にあるテーブル席についた。
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