126人が本棚に入れています
本棚に追加
/167ページ
2枚ある扉を抜けて店内に入ると、そこは落ち着いた大人の時間が流れていた。
キッチンを含めても20畳ぐらいしかないスペースでは、数名の男女がゆったりと食事を楽しんでいるようだった。
狭い店内に並べられた年季の入った木製のテーブルも、擦り切れた赤いソファーも、何だか昭和感満載で、老舗のバーといったいった感じだ。
チキンライスが好きなお子様が、気軽に入る店ではないような気がした。
「いらっしゃいませ」
僕が躊躇っていると、黒いカフェエプロンをつけた整った顔の男が声をかけてきた。
若い女の子店員ではなくて、僕はほっと胸を撫で下ろす。
男性店員の、変に愛想のいい笑顔を浮かべるでもない——悪く言えば事務的な対応も、僕にはかえって都合が良かった。
「カフェペンギンの家」の店員達は皆、貼り付けたような営業スマイルを浮かべていて、慣れるまでに随分と時間がかかってしまったのだ。
とりあえずスープご飯を食べてから、これからの事は考えよう。
僕は、一番端にあるテーブル席についた。
最初のコメントを投稿しよう!