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「僕は渡辺 遼也といいます。響子さん、好きです。僕とお付き合いして下さい!」
『はい?』
響子さんとリッスーが同時に素っ頓狂な声を上げた。
二人分の小さな黒い瞳が僕の顔に向けられる。
そして少しの間を空けてから、響子さんの瞳にふっと笑みが浮かんだ。
「……渡辺さん、何を仰るかと思ったら……」
「冗談じゃありません! 僕は真剣です! 一人の女性として響子さんを愛しています!」
僕は背筋を伸ばして気をつけの姿勢をとってみせる。
そう、僕は、その柔らかな表情の裏に隠されている熱く情熱的な響子さんの真の姿を見てみたいのだ。
彼女の事をもっと知りたい、深く感じたい。
……そう強く思う。
それは……、「恋してる」って事だよね?
「いや……、だって、何を言っ……、だって私、あなたのお母さんと同じぐらいの年齢よ」
珍しくしどろもどろになる響子さんは、ほんのり頬がピンク色に染まっていて何だか可愛らしい。
「年齢なんて関係ないっす!」
「いやいやいや、さすがにそれはないでしょう……」
「そうですよ。響子さん、今、歳の差恋愛とか流行ってるじゃないですか!」
リッスー、ナイスフォロー。
「もうっ、大人を揶揄うもんじゃありません!」
「僕だって25の立派な大人です!」
「えーと、えーと、とにかくっ、私は忙しいの! 失礼させて頂きますね!」
そう言うと響子さんは、ピンクの頬を手のひらで押さえながら、キッチンの方へと走って行ってしまった。
カウンターの向こう側にいた無愛想な男性店員に何やら指示を出しながら、響子さんは自身もテキパキと動き回っている。
「……僕は振られてしまったんでしょうか?」
僕のぼそっとした呟きに、リッスーが言い難そうに口を開いた。
「そう、……かもしれませんね……」
「やっぱり…….」
「……あ、でも、響子さんが今フリーなのは間違いないです。まだ望みはありますよ」
リッスーはそう言って、自分の右手でぐっと握りこぶしを作ってみせた。
「そうですよね……。響子さんのような女性が簡単に落ちる訳ないですもんね。僕、頑張ります!」
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