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でも、どうしようか。
もう歩き疲れちゃったな……。
駅前通りの方へ行く気にはなれない。
そうすると、見つかり易くなっちゃうから……。
何気なく足元に視線を落とすと、目に入ってきたのは、黄色い電球に照らされた小さなイーゼル。
きっと雑多な人達が出入りする賑やかなカフェが目の前にあったのなら、見落としてしまいそうなくらい小さな灯りだ。
スープご飯の店「音の食堂」
多分、ライトがついている、という事は営業しているんだろう。
こんなところにお店があるなんて今まで気がつかなかった。
でもなんだか隠れ家的な感じが興味をそそられる。
それに目立ちにくいのなら余計に好都合だ……。
誰に向けるでもなく小さく頷くと、あたしはその薄暗い階段に足を向けた。
このところ日中はだいぶ日差しが暖かくなってきたというのに、その階段は何だかヒンヤリしていた。
急な階段に足を取られないようゆっくりと下りていく。
下りて直ぐ左側に見えてきた店構えは、何だかレトロな雰囲気。
ドアノブも丸い形をしていて回して開けるタイプ。
木製のドアの塗装の剥げ方も、煤けたガラス窓も何だかいい感じ。
そしてゆっくりとその木の扉を押し開けてみると、その向こう側には……、金属製のもう一枚の扉があった。
何だろう……。
よく見てみると、その扉には人の名前が書かれたプレートが下げられている。
「本日のライブ……」
ライブ?
ライブバーみたいな感じ?
前はよくクラブとかに遊びに行ったりはしたけど、さすがに1人で行った事はない。
それに建物の規模からしても、そんなに大きくはなさそうだけど。
あたしがどうしようか迷っていると、今入ってきたばかりの木製の扉が開く音がして、後ろから男性が入ってくる。
……まあ、いいか。
それに、ライブとかでガヤガヤしている方が見つかりにくい……。
あたしは男性に押し出されるように金属製の扉を開いた。
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