ココナッツミルクスープと世界の中心 ③

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 人々の楽しそうな話し声。  柔らかく店内を照らすオレンジ色の灯り。  ゆるりとしたテンポの洋楽が耳に心地良く響く。  防音になっているその重い扉の向こう側は、思ったよりも、ゆったりとした空気が流れていた。  瑠璃達と時々行っていたクラブBIONのようにキラキラとした華やかさはないけれど、そこは体全体を包み込んでくるような穏やかさと適度なざわめきに満ちていた。 「あっ……」  そこにきてあたしは自分がいつものスウェット姿なのに気がついた。  元々あたしはだけだし、普通の飲食店でスープご飯を食べてみたかっただけなのだ。  あたしが入口付近でマゴついていると、後ろから来た男は馴染みの客なのだろうか、カウンター付近にいた小動物顔の女性店員に、慣れた様子でライブ代とドリンク代を手渡していた。 「いらっしゃいませ」  気がつくと、髪を一つに結んだ黒縁メガネの中年女性があたしの目の前に佇んでいる。  年齢的に見て、ここの店主だろうか。 「……あの、スープご飯は食べられますか?」  中年女性は、ナチュラルに整えられた眉毛を申し訳なさそうに寄せてみせた。 「お出しできるんですが、今はライブ営業中なので、ミュージックチャージ料とドリンク代を頂きますが、よろしいですか?」 「大丈夫です……けど」  そう言ってあたしは自分のスウェットに視線を向けてみせる。  こんな格好でもいいのかな……? 「カウンターの奥の方がいいかしら?」  彼女はあたしの部屋着のような格好を気にする様子もなく、柔らかい笑顔を向けてくる。 「はい、お願いします」
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