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あたしは汗ばんだ手のひらで握りしめているそれをじっと見つめた。
母乳用搾乳器。
空気圧で母乳を搾り出す機械だ。
あたしがもっているのは、トートバッグにも入れられる手動式の簡単な作りの物だ。
産まれたばかりの赤ちゃんはまだ胃が小さいので、こまめに授乳しなくてはならない。
その為、小さな赤ちゃんを保育園や人に預けなければならない時は、どうしても途中で授乳が必要になってくる。
ミルクで育ててる子は粉ミルクと哺乳瓶を渡しておけばいいけど、母乳育児のお母さんは予め母乳を搾って用意しておき、授乳の時間になったらそれを哺乳瓶に入れて飲ませてもらわなければならないのだ。
搾乳器は本来はそういう時の為に使う物だ。
他には、乳腺炎(*)の予防の為に使ったり、お母さん自身の病気や投薬等で、授乳ができない時に母乳を搾り出す為に使用したりする。
けど、あたしは自分の為だけにそれを使う。
多分今頃、ママが美緒に粉ミルクを与えているだろう。
美緒は最近始めた離乳食どころか、果汁すらも飲んでくれないけど、幸い粉ミルクだけは嫌がらずに飲んでくれるのだ。
* うっ滞性乳腺炎は、授乳中のお母さんの母乳が、詰まり等から乳管内に溜まり、乳腺が炎症をおこした状態をいいます。
それが細菌に感染すると、化膿性乳腺炎になり、激しい痛み、悪寒、高熱が出たりします。
予防の為には、こまめに授乳したり、赤ちゃんが飲み残した分を搾乳器で搾ったりして、母乳を乳管内に溜めないようにするのが良いようです。
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