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気がつくと、スウェットに残っている水滴跡の上に、新たに生暖かいものがポトリと滴り落ちた。
それは持っているグラスからではなく、あたしの頬を伝ってゆっくりと落ちてきた物だった。
「自分の体に心が追いついていっていないのに、だからと言って、逃げ出したくても体がついてくるんです……」
短絡的な行動だとはわかってる。
それでも、ケイさんみたいに搾乳器があれば、嫌な現実からほんのちょっとの間だけでも逃れられるかな、って……。
もしかしたら、昔のあたしに戻れるんじゃないかって……。
けど、今のあたしには、BIONにも、昔の仲間の間にも、どこにも居場所はなかったんだ。
「お子さんは今、どなたが?」
「マ……、母がみてくれてます」
「そうなんですね、お母様が……。それは安心ですね」
あたしはスウェットを握りしめる手に更に力を入れた。
そう、ママに任せておけば安心なんだ。
あたしと違ってママは完璧だから……。
あたしは自分の事ばかり考えてるダメ親だけど、ママはいつだって娘の事、孫娘の事を最優先に考えてくれる立派な人間なんだ。
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