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「そそそそそそそんなわけあるか!せ、星哉とベッドであれこれとかそんな恥ずかしいことま、まだできるわけ……!」
「あーハイハイハイハイ」
どうやら、そういうことがしたい気持ちは非常にあるけれども、星哉を気遣って誘えていないということ、らしい。中学生の時点であっさり童貞捨てたくせに、何で今更そんな生娘みたいな反応なんだとついつい思ってしまう私である。まあ、それだけ星哉のことを大切にしているつもりなのかもしれないが。
「誕生日については、前々から話題に何度も上っててさ。ちゃんと覚えておこうと思ったんだよ、俺も。それでちゃんと、お祝いしようって」
俯いて、ぼそぼそと喋る兄。
「でも、スマホのメモに、一月ズレた日付を書いててさあ。でもって……誕生日プレゼントって、何を贈ればいいのかわからなくて」
「今までカノジョたちにアレコレプレゼントしてきたんじゃないの?何で今更そこで悩むわけよ?」
「お、女にあげるプレゼントならなんとなく想像つくんだよ!好きそうなブランドの財布とか、ネックレスとか、帽子とかマフラーとか!大体そのあたりで外れがねーから!で、でも同性と付き合ったの初めてだから、どういうのが好きかって逆にわかんねーんだって!」
普通、逆ではないのか?私が眉をひそめたことに気づいたのだろう。同性だからわかんないんだよ、と彼は繰り返した。
「同じ男だから、好きなものはわからなくはないんだよ。でも、どれもこれも、誕生日にあげるような特別感とか全然なくて……本当にこんなんでいいのか?ってすっごく思っちまって。そしたら、お祝いしたい気持ちはあるけど誕生日プレゼント用意できないままになっちまった、という、か……」
どんどん小さくなっていく声。なんとなく、状況を察してしまった。同じだけ、星哉への同情も。
「あのさあ、兄貴」
自分としても。できれば兄に、幸せでいて欲しい気持ちはあるのだ。星哉についてはまだよく知らないけれど、それでも兄が好きになったほどの少年なのだからきっと素敵な人物なのだろうとは思っている。
だからこそ。言うべきことは妹として、きっちりと言うべきなのだろう。多少彼を、傷つける結果になったとしてもだ。
「兄貴がやったこと、二重で相手を傷つけたと私は思うよ。そりゃ、星哉クンでなくても怒るって」
「そう、なのか?」
「そうそう。……あのね、これは男女カップルとか同性カップルとか関係なくね。誕生日って特別なものだって思ってる人は少なくないと思うわけ。特に、パートナーからお祝いされるってのは、すごく重たい儀式のようなものなんじゃないかな。誕生日は生まれた日なわけでしょ。それをお祝いされるってのはつまり、“君が生まれてきてくれて嬉しいです”って伝えて貰えるってことなんだから。それだけ、貴方の存在が嬉しいです、愛してますってことなんだから」
「それは、わかる、けど……」
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