愛のキックは本気で痛い

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「日付を間違えちゃうってのはある程度仕方ないとは思うよ。そういうミスもある。でもさ。……何度も話題に出たことがあるってことはつまり、それだけ星哉君は自分の誕生日を兄貴に忘れて欲しくなかったってことなんじゃないの?」 「あ……」  そう。話題に出してくるのは、それだけ意識させようとしていたということ。  それなのにいざその時になったら間違えられていた、なんて。それだけでも非常に残念に思うのではないか。 「その上。悩みすぎてプレゼント用意してなかったんでしょ。しかもその様子だと、一緒に買いに行こうとも言ってないわけだ?……それだけ、自分の誕生日は大切にされてなかったんだ、って思っちゃうんじゃないかな。でもって誕生日を大事にしてないってことは、生まれたことを大事にしてないってこと。……自分の存在って、結局その程度なのかって星哉クンは思っちゃったんじゃないの?」  しかも。ここで、同性カップルであることがネックとなってくるのである。  異性のカップル以上に、同性カップルは“本当に自分のことを好きでいてくれるのか”を常に不安に思うケースが多いのではなかろうか。いくらLGBTが認識されるようになってきた世の中といえど、未だに同性愛者、両性愛者は少数派なのである。生理的嫌悪があると言ってはばからない輩も少なくはない。そんな中、胸を張って“ちゃんと本気で愛されてます”と思えるほど自信を持って付き合える人が、果たして何人いるだろう。 「同性と付き合ってるからこそ、大事にしてあげなきゃいけないことがきっとあるよ。……大事なのは、心からおめでとうって伝えて、本当に大切に思ってるんだよってわからせて、安心させてあげることなんじゃないの?」 「安心……」 「そうだよ。……プレゼントに、特別感なんかなくていいって。安くてもありふれてても、その子が一番欲しいんじゃないかなって思うものをあげればそれでいいよ。……私だったら、それで充分嬉しいから」  今まで、少しお洒落な女子達と付き合ってきたからこそ、初めてで戸惑うことがたくさんあったのだろう。戸惑ったように顔を上げる兄の肩をぽんぽんと叩いて、私は言った。 「というわけで。コーヒー飲んだら、パフェ代置いてってさっさと行きなさいな!今日は土曜日なんだから、会いに行けるでしょ!あっちは一人暮らしらしーし!」 「あ、奢らせるのは変わらないのね」 「当たり前でしょーが!」
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