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空は鮮やかな水色が映え渡り、鳥たちが楽しそうに飛び回る。 地上では人の話し声が錯綜し、明るい活気を醸し出している。 日曜の昼。 皆が最後の休日をここぞとばかりに惜しみ、自由気ままに行き交う。 しかし、そんな休日の中、一人の少年はただただ暗い顔をして歩いていた。 少年の名前は、今泉かなめ。 彼の手には、年季がたっているのであろう、糸くずが飛び出し、元の色がわからないほど黒ずんだ財布がある。 そして、彼は自宅の玄関のドアをおそるおそる開ける。 キィ… 耳をかすめるような甲高い音が家の中に響き渡る。 「ただいま…」
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